ゲド的叙情詩 10
現実の母親はどうあれ、母というものが異常に気になってイライラしたり、懐かしくなって甘い気分にひたったりします。
そのイメージは、しばしば年長の女性に投げかけられ、その人のとりこになってしまうこともありますし、関係のない人でも、ひどく気になったりします。
そのイメージは、母なる大地である故郷に投影されて、故郷の民謡や味覚や、香りや似通った風景まで、特殊な情感を引きだすものとなります。
この元型の力は抗し難いものをもっていて、理性でいくら割り切ろうとしても、思うようにいきません。
すべて元型的なものにふれると、不思議なエモーションがどこからか涌きあがり、その考えから離れられなくなって、自分の心であっても、自分自身の自由意志では動かせなくなってしまうのです。
『ゲド戦記』に出てくる魔法使いたちは、まさにその元型の強大で呪術的な力の正体を知り、それに敬意を払うことを怠らないものたちです。