ゲド的叙情詩 8
『ゲド戦記』の魔法使いたちは、まずこの問題をよく知らなければなりません。
彼らはどんな姿にでも化ける術を学びますが、違う役割を演じていても、それは決して本当の自分自身ではないことを自覚していなければなりません。
また、王さまに姿を変えれば、人々が尊敬し、乞食に化ければ、人々がさげすんでみるというこの社会の仕組も同時に知ることになります。
どんな姿にでも自分を変えることができるということは、世間に見せている姿は、いつも仮の姿であって、本当の自分は別にあることを知って、はじめてできることといえるでしょう。
しかし、魔法使いでも、あまり長いこと一つのペルソナをつけすぎると、なかなかもとの自分に戻れなくなる危険があります。
この物語で主人公のゲドが地霊と影に追われて、ハヤブサに姿を変えて師のオジオンのところに逃げ帰る時、彼はしばらくの間、ハヤブサそのものになりきってしまいます。
人間の言葉も使えず、もとの姿に戻れなくなるのですが、これが、ペルソナの恐ろしいところです。
仮につけた姿に、あまりになりきってしまうと、本当の自分がわからなくなってしまいます。